さて、さっそくOP前に和奏家引き戸ガラスに張り紙が。
「本日は娘の文化祭のためお休みします こかげや」ぶつわよ？
とか言ってたら、ED後のCパートで同ポイントにまた張り紙。
「本日は娘が帰省するためお休みします こかげや」この親バカほどは限度がないようです。
結婚するから！とか言ったらどうなるんでしょう。
――最終話の冒頭、和奏が家を出るとき、ふと思い出したように遺影の母に
「お母さん、行ってきます！」と行き過ぎた足を戻してわざわざ挨拶しています。
・・・そう、和奏が彼女のお母さんとの最後の別れになった日、その日も天気は雨でした。
行ってきますも言えなかった。その鬱積はすでに振り払い、私の新しい人生を、もう一度歩み出したんだよ。
そのことを伝えるためにこのシーンをあえて入れたような気がします。
既にこのとき、和奏は高校卒業後の進路に音楽系大学を志望しており、このことは
最終回の卒業式前に教頭先生に伝えています。
「今年は無理かもしれないけれど、そういう(音楽の)大学に行きたいんです。」一浪を最初から覚悟してでも、音楽の道を、もう一度歩んで行きたい。
和奏は自分の道を、しっかりと自分の足で踏みしめて歩き出したようですね。
さて、動画を一旦巻き戻しましょう。
空は曇天、降りしきる雨。校門は締め切り、体育館も鍵、正面入り口にはガードマン
までつけて立ち入り禁止。
自身も裏口まで車で巡回している理事長さん。
すでに学園閉鎖、校舎取り壊し決定している(らしい)のに、どれだけ白サイに恨みが
あるんでしょうか・・・。
そして裏門付近で合唱時々バドミントン部と理事長が揉めている時、颯爽と登場するのが
彼、そういえば合唱時々バドミントン部の顧問だった校長。
校長は、かつて歌に(精神的に？)救われた過去があったような口ぶりですが、あれだけ
必死に白サイ開催妨害を阻止しようとすがりつく姿には、ただならぬ驚異を感じます。
いったい彼の青春時代には何があったんでしょうか？
そしてア○ルがギチギチだった教頭を
調教懐柔しておいたフラグがここで生きます。
その美貌をもってガードマンを手篭めにした教頭が、校長の責任で持って白サイを続行。
哀れ校長の運命は理事長(雇い主)から解雇のお達し。
いや、すでに教頭が登場する前に解雇を口頭で通達されていたのですから
むしろ教頭が上手く利用した形になったんでしょう。
さてそのちょっと情けない正義のヒーローを上書きするように現れた教頭。
声楽科から出張の声楽部と吹奏楽部で舞台をサポートすると提案。
あれだけ闘りあった来夏に舞台の監督を依頼。
この声楽科からのサポート、教頭の提案ではなく、なんと広畑さんが教頭にお願いした
そうです。
広畑さんとは、合唱/バドミ部に「遊びでやってる人はいいわね」とか嫌味言ってた
ショートカットの部長さん。何度も合唱/バドミ部と衝突していたあの人です。
最終話前の、クラブ部長を集めての生徒会会議。そこでの白サイに向けて熱血してる
来夏の熱波に当てられちゃったんでしょうね。
「私たちのこと素人って馬鹿にするんだから、あなたたちのすごいところ見せてよ！」
「それでも・・・私たち、歌いますから！」歌を歌いたい。その一心からの来夏の言葉が、音楽を志す者としての彼女の心に
響いたようです。
プロ志向意識を持っていたからこそ、合唱部をサポートする、と決断できたのでしょう。
――必要な人材はそろった、道具もそろった。でも、肝心の演劇を行うステージがない。
ステージとして想定していた体育館は締め切られている・・・(鍵は理事長？予備は？)
その時、今まで降りしきっていた雨が上がる。
「雨が上がりましたね・・・」かつて紗羽に来夏が言われた
「来夏は雨女だもんね」を思い出します。
降った雨で、辛く、苦しい思いもしたけれど、その境遇を一緒に乗り越えてきたからこそ、
今の合唱時々バドミントン部が、教頭が、校長が、そして白サイに参加してくれた全ての
みんながひとつになれたんじゃないだろうか。
雨降って、地、固まる。
来夏、彼女はみんなをひとつにまとめる役目を見事にこなしてくれました。
さて、紗羽はというと卒業まであと数ヶ月というこの時期に、部のみんなにも隠していた
ことがありました。
そう。諦めきれない夢、
騎手になること。その目標のため留学するというのです。
来夏にあのタイミングで聞かれなければ、いつまで言えずに引っ張っていたのでしょうか。
日本で騎手になるためには競馬学校を出ることが必須。しかしその入学には身体規制が
あり、紗羽の身長・体重ではその門をくぐることすら無理だと知らされた彼女は、
その規制がゆるい(ない？)海外の騎手専門学校(フランス等)に留学し、そこで騎手となり
その下りで国内での騎手活動もできるのではないか、と考えたようです。
――現在(リアル)日本競馬(JRA)には短期騎手免許や競争限定騎手免許があり、後者には
「国際競走で外国調教馬が出走し、外国の競馬に所属する騎手が騎乗する場合」とあります。
つまり海外(フランス)で騎手となり、活躍し、国際競争(ジャパンカップ等)に出場でき
れば日本でも騎乗することは可能です。
ただこれが日本で騎手として活躍するのとは微妙に意味合いが異なるのかもしれません。
しかし将来的に、海外で騎手免許を取得している者が、JRAの簡易試験(身体制限なし)で
JRA公認騎手となれる可能性もなくはないかもしれません。
――と、こんなことをぶっちゃけられたら黙ってうなづけないのがバドミでしょう。
「いつから？(留学する？)」の問いに、紗羽は
「来月から」と即答。
なんたる急展開。恋の花咲く前に相手がいなくなりそうです。
バドミが関係しているのか、やはり部のみんなとともに卒業式を迎えることすら
できなくなることへの寂しさ、申し訳なさからか、いつもよりややトーンダウンな紗羽。
そして再びバドミが気になることを言葉少なに聞いてきます。
「いつまで？(留学する？)」の問いに、紗羽は
「納得できるまで」とこちらも間をおかず答えます。
どのくらいまで踏み込めば納得するのか不明ですが、これまでの彼女の言動からすると
今のところ、[バドミ＜＜騎手への夢]な感じがひしひしと伝わってきます。
哀れバドミ。しかしバドミは日本クラスのバドミントン選手としての誇りにかけて、紗羽が空港で
皆に背を向けて登場口へ向かうとき、彼女に声をかけます。
足を止める紗羽。
一歩踏み出し、勇気を出して、何かを口に出すバドミ。
残念ながらここはEDのすばらしい歌により一切聞こえませんが、その直後の彼の表情、
そして顔こそ映りませんが、その後の飛び立つ飛行機をバックに、来夏の声にも
振り向かず、ただ彼女の飛び行く空を見やり、何かを拭く様な仕草をするバドミ。
状況を察した和奏は、来夏の手をとり、彼を一人にしてあげています。
哀れバドミ。まだ君の将来には無限の希望が残されているさ。
紗羽は当初からの自分の夢を貫くため、親(というか父)の反対を押し切り、日本という
枠から飛び出して行きました。
学校卒業という称号も、かけがえのない友人も、ほんの少し恋心を抱いた異性も、
長年寄り添ってきた愛馬サブレからも離れ、それでも夢を追い続けています。
彼女が再びみんなの前へ戻ってきたとき、彼女はより逞しく育っていることでしょう。
三者三様に新しい道を踏み出したことを描いた最終回。
13話とは思えないほど詰め込まれていたのに、それを感じさせない良いアニメでした。
